先日、遺言書を作成して、法務局の保管制度を利用したので、メモをまとめた。
◆「ぶっちゃけ遺言書作成にメリットはあるの?」
ある。
・残された家族にスムーズに遺産分割するため、争う方の争族にならないため
遺言書を書くことで、銀行や証券会社への遺産分割協議書の提出が不要になる。
さらに遺言書があれば、遺産分割方法を指定できるため、遺族はその通りに遺産分割することになる。それにより不毛な争いを避けることができる。
(暗号資産については保有しているという事実を遺言書で伝えるだけでは相続することはできない。この辺りに相続方法ついては今後、記事でまとめる予定)
・家族に対する相続の意識付け
自分自身が遺言書を書いて、書いたという事実を家族に知らせることで、相続の意識付けをすることができる。自分の両親、兄弟が遺言書を書くようになれば、いざ相続が発生したときに助かる。
ほとんどの人は相続のことなんて考えていないし、死ぬ前になってもよくわからないで終わっているはず。「相続財産の内容を整理する」「遺産分割について決める」「遺言書を書く」など、少しでも早めに準備するだけでも残された家族はありがたいし、自分自身の資産を考える良いきっかけになる。
「両親が相続についてまったく考えていなくて困るんだよね。。」ではなく、家族の相続リテラシー向上のために、まずは自分自身が率先して遺言書を書くべし。
◆「遺言書を書くメリットはわかったけど、具体的にどんな遺言書があるの?」
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類がある。
(厳密には秘密証書遺言というのもあるが、一般的ではないので省略)
具体的な違いについては、「自筆証書遺言 公正証書遺言 違い」などでGoogle検索してほしいが、ザックリ言えば
「特に揉める感じはないが、遺産分割協議書の提出が不要になる遺言書を準備することでスムーズに遺産分割をしてほしい」、「死亡時通知で相続人に遺言書があることを確実に伝えたい」、「遺言書作成にお金をかけたくない」であれば自筆証書遺言でOK、
「遺言書があっても、納得しない人が出てきて揉めそう」「遺言書の有効性があるかどうかで争いがありそう」「数万~10数万のお金がかかっても確実に遺産分割したい」であれば公正証書遺言が良いと思う。
基本は自筆証書遺言で、揉めそうなら公正証書遺言という感じ。
この辺りの判断は配偶者や子がいたりすると、きちんと考えて遺産分割をする必要があるので、相続についての知識があると良し。
参考ページ
相続対策 備忘録
◆「自筆証書遺言と公正証書遺言どっちで作成するの?」
自分はまだ配偶者も子もおらず、相続人は両親だけで現状の遺産分割は特に問題なさそうなので自筆証書遺言で遺言書を作成した。
自筆証書遺言は、法務省の自筆証書遺言保管制度というのを利用することで法務局で遺言書を保管できる。それにより、生前に指名した1名に、遺言書が保管されている旨を通知することができるのが非常に便利。しかも生前に保管している間、自分以外は遺言書を見ることができないのもありがたい。
参考ページ
自筆証書遺言保管制度 – 法務省
公正証書遺言は、作成時に公証人1名と証人2名が必要なため、遺産分割の確実性が高いのがメリット。でも自分の場合はシンプルな遺産分割なので自筆証書遺言でも十分だと判断した
◆「どっちの遺言で作ろうかは決まったけど、なるべく費用を抑えて作成するにはどうすればいい?」
自筆証書遺言の場合、法務省が載せている様式を確認しながら一通り作成し、その後に専門家にチェックしてもらえば費用を抑えられる。
自筆証書遺言の作成例
・遺言書1ページ目 ※手書き
・遺言書2ページ目 ※財産目録はパソコン作成でOK
遺言書_作成例
※クリックしたらWordがダウンロードされる
よっぽど複雑な相続だったり、相続人同士が激しく揉めそうな場合を想定して公正証書遺言を作成するわけではなければ、専門家に多額の費用を払わなくても遺言書は作れる。自筆証書遺言でも1からの作成を専門家に依頼すると5万円くらいが相場だった。公正証書遺言はそれ以上かかる。
自筆証書遺言は様式をゆっくりと確認しながら進めれば一通り作成することができる。一通り作成した後は、下記リンク先を参考に、専門家から文章を確認してもらうと安心できると思う。
自筆証書遺言作成に役立つページや相談窓口
・法務省
※概要や様式を確認できる
・東京司法書士会
※一般的な質問は可能。書類作成についての相談はできない
・弁護士ドットコム
※弁護士に無料で相談可能
・ココナラ法律相談
※弁護士に無料で相談可能
・区役所や市役所の相談室(行政書士)
※一般的な質問は可能
・東京弁護士会の法律相談センター
※30分2,200円~5,500円
※東京以外は日本弁護士連合会のサイトから
近くの弁護士会を探せばOK
・自筆証書遺言の作成チェックサービス
※5,000円
自分は、法務省のページで自筆証書遺言の様式を確認しながら一通り作成し、その都度わからないことを調べつつ、弁護士ドットコムで弁護士に無料相談し、最後は法律相談センターで弁護士に直接チェックしてもらった。
公正証書遺言作成に役立つページや相談窓口
・日本公証人連合会の動画
※公証人の素晴らしさがわかる
・公正証書遺言についてのQ&A
・公証役場一覧
※相談窓口
公正証書遺言は、公証役場で無料相談した後は、制度のルール上、作成時に数万~10数万の手数料がかかるのは覚えておくこと。相続人同士が揉めそうな相続の場合は、確実性を優先して公正証書遺言にしておいた方が良いと思う。
◆自筆証書遺言保管制度を利用してみた
自分は、自筆証書遺言を作成したので法務局に保管ができる自筆証書遺言保管制度を利用した。
とにかく必要なこと(遺言書の様式、手続きの流れ、必要書類)は、法務省のページにまとまっているのでじっくり読むこと。
参考ページ
自筆証書遺言保管制度 – 法務省
このようなページをじっくりと読むことができる読解力は、今後の人生で行政サービスを有効に利用する上でとても大切なことだと感じた。とはいえ、上記の法務省のページは図解や様式例が載っていて、わかりやすく書かれている。
予約では1時間30分くらいの時間を確保するが、自分が手続きした時は提出書類に特に不備がなくスムーズ進んだので30分くらいで終えることができた。
ネットでは「法務局の人は態度が悪い」という口コミがあったりするが、きちんと行政が提供しているページに書かれていることをじっくりと読んで、書類を準備できれば対応する方の態度は悪くならないはず。実際に自分の手続きをしてくれた方々は非常に良い対応をしてくれた。一人ひとりのリテラシーや読解力が上がれば、行政サービスの対応も良くなると思う。
手続きが終わったら、保管証をもらえる。
保管証があると、保管中の遺言書の閲覧、保管の撤回、変更の届出や、相続開始後に相続人が遺言書を請求するときに手続きがしやすくなる。
保管証は再発行ができないので大切に保管すること。
もし保管証を紛失してしまっても、保管番号がわかればいいとのこと。保管証を紛失しても、遺言書の変更や相続人が遺言書を受けとったり等はできるようになっているが、紛失しまうと面倒ではあるので、コピーした用紙を金庫に入れたり、写真で取ってオンラインで保管すると安心できる。
以上。