カルダノの分散性について気になったので調べたことをまとめた
◆前提
分散性や非中央集権性については、明確な指標を示すのは非常に難しいので、今回はわかりやすいノード数やステーキング先で判断していく
◆本記事を書くきっかけ
ビットコイナー反省会の東さんの書いた記事が非常に勉強になり、分散化について調べるきっかけになった。
参考記事
ビットコインとクリプト/web3はもう完全に別物です【FTX事件からの教訓】
記事の内容を超ざっくり言うと「アルトコインは中央集権性や信頼を受け入れてプロジェクトを拡大しており、ビットコインが目指しているトラストレスや分散化とは方向性が大きく異なっている」という感じ。
上記の記事は長いが、ビットコインの凄さ、分散性の素晴らしさについてにわかりやすく書かれており、非常に勉強になるため、じっくり読むのがオススメ。
下記よりビットコイン、イーサリアム、カルダノの分散性についてのデータを載せていく。
(それぞれネットワークの合意方法について、ビットコインはPoW、イーサリアムはPoWからPoSに移行中、カルダノはPoSだが、その点の細かい解説は省略する。本記事ではざっくりとした分散度を理解するまでとする)
分散度を示す指標として各プロジェクトのエクスプローラーなどを見ると、ビットコインはノード、イーサリアムとカルダノはバリデータであるが、COINPOSTの解説の通り、バリデータ=ノード、という認識で本記事は進めていく。
◆ノード数
ノードとはブロックチェーンのネットワークに参加しているコンピューター機器のことである(参考記事)。
ノードが多いほど、分散されやすいと考えて良いかと思う。
【各ノード数】
ビットコイン:約14,000(参照データ)
イーサリアム:約480,000(参照データ)
カルダノ:約3,000(参照データ)
PoSのイーサリアムとカルダノはノード数で10倍以上の差があるのが現状
◆マイニングプールやステーキング先
PoWであるビットコインはマイニングプールの分布、PoSであるイーサリアムとカルダノはステーキングプールの分布を下記に載せる。
【ビットコイン】
中央集権的に見えるが、1番大きいFoundry USAについては、プール内に7社のマイナーがある(参考記事)。2番目に大きいAntPool(参照データ)、3番目に大きいF2Pool(参照データ)も内部に大量のマイナーがいるので、上記の分布ほど集権的ではない。また、ビットコインは51%攻撃をすることでネットワークを乗っ取ることができるが単純に51%を占有するだけでなく、51%を占有したマイナーはマイニングしながら攻撃し続けなければならず、莫大なコストがかかる(参考動画 ※8:44~10:58)。ビットコインのネットワークを攻撃するのは合理的ではなく、非常に難易度が高いので、かなり安全性が高いと考えられる。
【イーサリアム】
Lidoが4分の1以上を占めていて中央集権的に見えるが、Lidoの内部はDAO構築プラットフォームであるAragonで構築されたLidoDAO(参考記事)によって30社ほどのノードオペレーターで分散されている(参照データ)。そのため、上記の分布ほど中央集権化されていない(参考ツイート)。ただしLidoDAOが悪い人に占領されて集中化してしまう可能性はある点に注意する必要がある。Lidoの次に大きいのがcoinbase、kraken、binanceの大手海外取引所。これらは分散されているし、取引所が結託してETHのネットワークを攻撃する動機はないと思うので、ETHのネットワークの安全性は非常に高いと考えられる。
【カルダノ】
上記画像の「SOLO 22.36%」は、単独プールの集まりなので、1番大きいグループは「BINANCE 10.99%」である。カルダノのノード数は、ビットコインとイーサリアムのノード数に圧倒的に負けているのは事実だが、ステーキング先の分布を見ると十分に分散されていると考えて良いかと思う
◆ETHとADAのステーキング
PoSの分散性についてETHとADAのステーキングは無視できないテーマなので、それぞれのステーキングの特徴をまとめた。
ADAのステーキングの特徴
・ウォレットに保管したままでOK
・ロックされない
・いつでも委任先を変更可能
・年利3~4%の利率
・6,400万ADA以上委任されているプールは報酬が下がる
ヨロイウォレットやダイダロスウォレットでのステーキングは、カルダノの超強力なdAppsであるとホルダーは認識する必要がある。ステーキングの仕組みが本当に素晴らしい。だからこそ少ないノード数にも関わらず、分散性を保つことができているかと思う。
しかし、1つのグループが大量のプール運営をすることができるという問題がある(参考記事)ので、巨大グループによる委任プールの独占が今後起こらないかどうかは注意深く見ていく必要がある。
ETHのステーキングの特徴
・ウォレットからETHを預ける
・預けた分はロックされる
・ShanghaiアップデートまでETHを動かせない
※2023年に実施予定:参考記事
・年利3.3%~5.72%
※参照データ→報酬ルール、ステーキング分のETH(執筆時は約1,500万ETH)
(補足として、Lido FinanceにETHを預けたらstETHを受け取ってDeFiで運用したり、売買が可能)
カルダノと大きく異なるのは、ステーキングをするにはウォレットからETHを預けてロックする必要がある点。もしETHのステーキングが「預ける先をいつでも変えられる」という仕組みになっていれば、(LidoDAOの内部で30社ほどに分散されているのは考えないとすると)Lidoや他の取引所による集中化を防げたはず。現状はLidoに全体の4分の1以上がステーキングされている状態である(参照データ)。さらにETHの場合は、2023年予定のShanghaiアップデート後でないとステーキング先を変更できない(参考記事)ので、ステーキングの委任先の集中化はまだ続くと予想している。
今回の分散性という話からずれてしまうが、FTXの件によって、「どこかに資産を預けて増やす」というのが非常に危ないというのは投資家にとって周知の事実になったはず。ADAのステーキングはウォレットに保管したままロックされないので、さらに評価が高まると予想。
しかし、イーサリアムについてはShanghaiアップデートが完了するまでETHを動かすことができない。元々The Mergeがスタートしてから6カ月~1年でETHを引き出せる予定だったが、引き出し時期が未定になった(参考記事)。
多めのETHをステーキングした人は、ETHが動かせなくてもステーキング報酬が入り続けてしまい税金がヤバいかと思う。元本のETHを売却して納税資金を用意できないので、資産の大半がETHの場合で国税に狙われたらアウトな人がいると予想している。
ただ、今回イーサリアムについて調べたことで、イーサリアムの凄さを実感することができた。イーサリアムの本命はPoSにも関わらず、PoWの時点でカルダノとは比べられないほどのdApps、Defi、NFTがイーサリアム上で作られている(カルダノでもdAppsは構築されているがキラーアプリと呼べるようなものはまだ出てきていないのが現状)。イーサリアムはPoW時の実績、そして現在移行中であるPoSで多くのプロジェクトが動くようになったときの大きな期待により、人気があるのだと思う
※2022年12月9日追記※
ETHステーキング引き出し機能の実装は2023年3月が目標とのこと(参考記事)。
※※※
◆カルダノ開発会社IOGの集権性
カルダノの集権性を考えるときに思ったのが、チャールズさんCEOのIOG(Input Output Global)について。
今までチャールズさんが国のお偉いさんと会って話したり、実際に提携するためにはIOGが主導になっている。実際にIOGがジョージア(参考記事)やエチオピア(参考記事)と提携していた。
確かにカルダノ大型アップデートでシェリーが実装されたことで、分散化が始まったが、実態としてIOGが強いという事実はあるかと思う。
とはいえ、決してIOGのステーキングプールがネットワークを独占しているわけではない。IOGプールは1つを除いて廃止されている(参考記事)し、IOG保有分のADAは他のプールに分けて委任されている(参考記事)ので、分散性がさらに高まっている
◆非中央集権性について他に議論になりそうなポイント
・ビットコインはPoW、イーサリアムはPoWからPoSに移行中、カルダノはPoSであるため、そもそも単純比較できない
・そもそも非中央集権であるとはどういうことなのかが、明確に定義できていない(COINPOSTの記事では、検閲に強いこと、プロジェクトリーダーから干渉されないこと、と書かれていた)
・イーサリアムだとヴィタリックさん、カルダノだとチャールズさんの影響力が強すぎていないか?1人の超強力なリーダーがいなくてもプロジェクトは今後も拡大成長していくか?
(イーサリアムとカルダノに規模の違いはあるが、きちんとノードによって分散されている。しかし、本記事の冒頭に載せた記事の考えを参考にすると、強いリーダーや強い暗号資産会社によって実態は集権的ではないのか?という懸念があるのかと思う。だからこそ特定の強い誰かに頼らなくてもプロジェクトが動いているビットコインが高く評価されているはず。サトシナカモトさんが誰かわからず、姿を現さないからこそビットコインは素晴らしい)
・カルダノはダイダロスウォレットがフルノードなので、その分をノード数にいれたらもっと分散されているとも言える(参考記事)
・イーサリアムノードは50%以上でAWSが使われているので集中化の懸念がある(参考記事)
・しかし、カルダノのプール運営にもAWSが20%くらい使われているので今後増えないか懸念がある(参照データ)
・現在、カルダノのすべてのプールはIOGのノードを接続先に含めることを推奨されており、IOGが落ちたら、カルダノネットワークが不安定になる懸念がある(参考ツイート)
◆情報の切り取り方
ノード数やプールの分布をパっと見ただけだと、ビットコインやイーサリアム側からしたら「カルダノは3,000プールしかないとか少なすぎでしょ!」という感じかと思うが、カルダノ側からしたら「ビットコインとイーサリアムは集中化しすぎでしょ!」という感想になりそう。
正直なところ、今回調べたことでどのプロジェクトが1番非中央集権的なのかが余計にわからなくなった。少なくとも今回調べたプロジェクトはどれも十分に分散されていて、非中央集権であると思っている。
ADAを保有しているので、どうしてもカルダノよりな感じで情報を解釈してしまいがちなので、客観的な数値データを見ることで、できる限り正確に情報を判断したい。今回いろいろ調べたおかげでビットコインとイーサリアムにも興味を持つことができた。ADAを多く保有しているのは事実だが、ビットコインとイーサリアムを理解するためにカルダノマキシマリストのような思想にならないようにしていこうと思った。
非中央集権であることの重要なポイントとして、「特定の集団が悪いことをしたり、一部のネットワークが停止したとしても、ブロックチェーンが問題なく稼働し、成長を続けること」があると思う。その点についてビットコイン、イーサリアム、カルダノのプロジェクトに引き続き注目していきたい。
以上。